ダイコンよもやま話
・ ダイコンよもやま話
食卓に並ばない日はないのではないかと思ってしまうほど、大根は生活に密着した野菜ですね。
カイワレは大根の芽ですし、ちょっと大きくなれば青菜として出回ります。博多では「コナ(小菜)」と呼んでいます。干せば切り干し大根。漬け物はあまりにも定番ですし、刺身のツマにも欠かせません。昔のNHKドラマ「おしん」では、大根めしのシーンが鮮烈でしたっけ。ちょっと古いですね。トシがばれそうです。
独特の辛みから練りわさびにも入っています。西洋わさびと書かれていますが、実はアブラナ科の植物です。別名をわさび大根ともいい、洋名はホースラディッシュ。ちょっと褐色かかった白っぽい根っこをすり下ろして使います。
大根の起源は古く、古代エジプトでも食用にされていたとか。日本には、弥生時代にはすでに伝わっていたともいわれています。
辛みの成分はイソチアシアネートといって、抗酸化作用があり抗ガン効果も認められています。またジアスターゼは有名な消化酵素ですね。
大根役者という言葉がありますが、これも消化がいいことに由来しています。大根はどんなに食べても食あたりしないということと、へたくそな役者さんじゃ芝居が当たらないということを掛けた言葉ですね。また大根は白いので、「しろうと役者」に掛けたという説もあります。
大根は福岡でも古くから作られておりまして、国の指定産地になっています。市内、県内はもとより関西圏まで運ばれていきます。
大根ひとつをとっても嗜好に地域性があるようで、京都に送るものはより 太い方が好まれますが、輪切りにした漬け物の材料になるのが理由だそうです。逆に博多ではあまりに太いものには値が付かないとか聞いています。
博多の屋台ではほとんどのところでおでんを提供していますね。定番はもちろん大根ですが、おでん用にむいた皮も漬け物にして出すところもあります。また皮はきんぴらにしても美味しくいただけますし、大根は捨てるところなんて全くない優れものですね。
大根の旬は冬です。しっかりダシの味をしみこませた風呂吹き大根は思わず笑顔になるくらい美味しいですね。温かいそぼろあんかけを作ってみませんか。京料理の定番ですが、以外と簡単に作れるんですよ。
大根は輪切りにして皮をむき、煮くずれないように面取りをしておきます。
ポイントは下ゆでです。ゆで汁には米のとぎ汁を使いますが、ないときは小麦粉を少し入れてゆでるといいです。下ゆでするとアクが取れて味がしみこみやすくなります。大根特有の臭いも取るために、火が通ったら水につけておきましょう。
そぼろあんには鶏肉を使います。
鍋にごま油を引いて、鶏挽き肉と生姜の千切りを炒めます。挽き肉に火が通ったら3カップのダシを張り、下ゆでした大根を加えて煮込みます。アクはこまめに取りましょう。
アクが出なくなったら日本酒1/3カップと砂糖を大さじ1杯加えます。10分くらい煮たら醤油とみりんで味を付け、また30分以上煮込んでください。
味がしみた頃あいに大根を取り出して、さらに煮汁を煮詰めます。味見をして最後に味を調えたら、水溶き片栗粉を加え、とろとろのあんができあがりです。大根にかけて食べましょう。お好みで柚子の皮など添えると風味も増します。蒸した魚や鶏肉にかけても美味しくいただけますよ。
野菜の淡白な味わいを生かした料理は、日本酒との相性が抜群です。特に生酒などのフレッシュな味わいのお酒を合わせるとお互いの爽やかさが生きてきます。清涼感が持ち味の生酒は冷たく飲むのがお勧めです。温かく、噛むほどに旨味がしみてくるそぼろあんかけによく合いますよ。
おでんなど醤油の味が主張する料理には、純米酒などをお燗にして合わせてみてください。純米酒や本醸造酒などお米の味わいが生きたコクの深いお酒は、よほど淡白なものか反対に濃厚な味つけの料理、脂っこい料理以外なら無難に合わせることができます。
逆に生酒だと持ち前のみずみずしさが濃い味付けに負けてしまいますので、あまりお勧めではありません。
(平成23年12月)
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